新渡戸さんの軽めの本を読んだ。

前に新渡戸稲造の「武士道」を読んだことがあるが、これはそれより軽い、エッセイのような読み物だ。
「修養」「自警」という2冊の本を編集して発行した本らしい。



たとえ当たり前のことを言われても、その人物を知っていると深みが増すし納得も行く。
どんな人柄で、どんな人生を過ごしたのかもわからない著者の啓発本は、
いくら良いことをいっていても説得力がない。とオレは感じる。



この本はまず、最初のページに載っている新渡戸さんの顔がいい。
人柄が現れているような気がする。
よくある「使える人間になること」ということよりも、
「深みと暖かみのある人間になること」を第一に考えているようで、ほっとする。
彼が東京女子大の学長だったのは知らなかったが、



本校は知識より見識、学問よりも人格を尊び、
人材よりは人物の養成を主としたのであります。



というあいさつが紹介されていた。
「人物の養成」
というのは新鮮に響いた。

「人材」からは、工場にある切れ味のいい良い機械を連想するし、
「人物」からは、大きく見渡す目を持ち、意志を持って全体をよくしようとする人間を連想する。


今の大学はどこも「人材」の方に主体において、資格をとらせたり、現場で使う知識を
詰め込むことに力を入れているようだが、本来大学は
「すぐ役には立たないけれど本質的なこと」
を教える場ではなかったのか?
などと考えてしまった。



この本は、実感にあふれているところがいい。例えば

「人の面倒を見れば、恨みとなって返ってくることが多い」(^^)
とか。

逆恨みは確かに多いんだよね。
もっとよくしてくれてもよかったのに、とか
あいつがよけいなことしたせいで、とか。
とかく人は自分のことに必死で、こちらの労力など考えてくれないことは多い。


でも、それを承知したうえで、できるだけ世話をすることだ。
と言っているのには笑ってしまった。
新渡戸さんもオレらと同じような目にあっている(^^)。



この本で言っていることは一言で言うと、


「逆境も捉え方1つでまたとないチャンスになるし、
順境は心構えによっては逆境といえる。
おおきくみれば逆境も順境もない。」


ということだ。
そして順境、逆境それぞれの中で過ごす心構えについて説いている。


勝海舟夏目漱石など歴史上の人物と話したことなども
さりげなく載っていて、彼らの直の人柄に触れたような気がして
おもしろかった。



オレ的に印象に残ったのは



「西洋人は何年も先の計画を立てているのに、
日本人は『今日の命が明日あるとも限らない』などといって
長期的な計画を立てるのが非常に苦手だ」



と言っている部分。
おお、オレの計画ベタは日本人の遺伝子に組み込まれたものであったか(^^)。
やはり長年天変地異にさらされてきた民族ゆえの性格なのか?


「しかし、やはり計画は大事だ。
不幸にしてというか幸いと言うか、長生きしてしまったらどうするのだ。」

などと言っているところがおもしろい。



新渡戸さんの人間性が溢れ出ている。
他の本も読みたくなってしまった。

逆境を越えてゆく者へ

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